nekuradjです
今回はヒップホップのトラック(曲)を製作する上で基本となる「サンプリング」という手法ついて、ヒップホップ初心者向けに簡単にご紹介してみたいと思います。
このご時世、趣味を仕事にしないのは勿体無い
素人からすると「曲を作る」っていう行為自体がなんだか難しそうな機械をいろいろと駆使して作っているというイメージが強いのではないでしょうか。(楽器を演奏して、それを録音する機械があって、つまみの沢山ついてるよくわからない機械やパソコンでなんか楽器の音とか声とかを編集してたりして、、、って難しそう!、、、と。笑)
もちろんスタジオで作業する場合はそういった機械がたくさん備わっているのだと思います(筆者自身ちゃんとしたスタジオには足を踏み入れたことはありません・・・)が、実はそんな時代はとっくのとうに過ぎ去り、今はパソコン1台さえあれば作曲作業ができてしまう時代なんです。しかも我々のような素人の耳で「スタジオで作られた曲」と「PCで作られた曲」を聴き比べても違いがわからないくらいクオリティの高いものになってます。
他にも本を執筆する作業や、絵を描く作業なんかもPC1台で出来てしまいますよね。それも音楽と同じように使い方によってはプロ顔負けの完成度を発揮できます。近年PCというのは年々アップデートを繰り返し、非常に人間の生活や趣味に最適化した便利なモノに進化しています。
で、ここでちょっとだけ筆者が最近つのらせている思いを話させてください。
そういったPCやネットの進化は裏を返せば「誰もが始めやすい環境になってきている」ということです。
昔の人は憧れていた職業になりたくても、専用の道具や機材にたくさんお金をかけて揃えてやっとキャリアスタート・・・と思いきや「この道具はどうやって使うんだ?」なんて悩んで、学校に行って勉強したり、解説本を徹夜で読んだり、セミナーに行って勉強したり、でまたそこにお金をかけて、ようやく作業を初めてみたもののなんか上手く作業が進まず・・・結局「自分には向いてないのかも」と挫折して、せっかく揃えた道具も数回手を付けただけで開かずの押入れ行きに・・・なんて経験してる人が大半だと思います。
それが今ではPC1台あれば多少お金はかかっても専用の道具や機材を揃えるよりもっと安くPCのソフトで同じような作業が出来てしまい、やり方だってネットで調べればブログや動画での解説が無料でいくらでも出てくる時代です。
そんな夢のような世界が現実になっているんです。昔の人たちが叶えられなかった夢を今の若い世代は簡単に叶えられる時代なんです。
なので今仕事で悩んでいる方や、趣味を仕事にしたいけどなんか一歩踏み込めないって方は、ぜひ思い切ってチャレンジして欲しい。
と、よく若者に説いてます。笑
お金をかけずにチャレンジできるのですから、試す価値は大いにあると思います。自分も今でもいろいろ思い立った時に出来るだけ行動するようにしてます。
そう遠くない未来にきっとあなたも趣味を仕事にする時代が訪れることでしょう。
サンプリングとは
ということで、筆者のたわ言が入りましたが、ここから本題に入ります。笑
ヒップホップにおける「サンプリング」という作曲の手法は1970年代のヒップホップ黎明期から既に始まっております。もともとはヒップホップの歴史を語る上で非常に重要なDJの技法となる「ブレイクビーツ」の発見がサンプリング文化の発展に大きく貢献していると言われております。
ヒップホップにおける「ブレイクビーツ」の歴史に関しては以前別の記事でご紹介しておりますので、お時間あればこちらもチェックしてみてください。
「サンプリング」をWikipedia先生のお言葉を借りて説明すると
過去の曲や音源の一部を引用し、再構築して新たな楽曲を製作する音楽製作法・表現技法のこと。
引用:wikipedia
すでに世の中に存在するありとあらゆる曲の中から「自分の好きなパート」を抜粋して、その好きなパート同士を合体させたり、抜粋した部分の音の高さや速さを変化させたりして、新たな曲に再構築するというのが「サンプリング」の技術です。
ということで、百聞は一見に如かず。
実際にサンプリングによって作られた曲を聴いていただきましょう。
ヒップホップの歴史上では語り草なラッパーThe Notorious B.I.G.(ノートリアス・B.I.G.)の1994年にリリースされた、ヒップホップの曲の中でも非常にメロウで聴きやすい「Big Poppa」という代表曲です。
そして以下が「Big Poppa」のサンプリングの元ネタとなった、1983年リリースのIsley Brothers(アイズレー・ブラザーズ)の「Between The Sheets」という曲です。
お分かりですよね。
Big PoppaにBetween The Sheetsのメロディーがしっかり入ってますね。これがいわゆる「サンプリング」という手法です。
通常の曲は楽器を弾いて「0」の状態から「1」に持っていくとイメージすると、サンプリングは既存の曲「1」の中にある自分の好きなパートだけを持ってきて、そこにドラムパートも自分の好きな曲の「1」を持ってきた結果「1+1=2」にしちゃう。みたいな概念です。
自分の好きな曲たちの「オイシイ部分」だけを抜粋して、それを合わせることで更にカッコよく再構築するという手法ですから、こんな合理的な作曲方法はありませんよね。著作権の問題さえなければね。笑
サンプリングの著作権問題
サンプリングによる作曲の合理性はなんとなく伝わったと思いますが、言わなくても分かる通り「人の曲を使う」手法ですので、やはり著作権の問題が否めません。
サンプリング文化がクラブミュージックを支えてきた重要な要素である事実や、作曲の手法として確立している部分もあり、ぶっちゃけ多少のフレーズの引用であれば著作権者から見逃してもらえるケースが今はほとんどです。ですがサンプリングされる尺があまりにも長かったり、著作権者によっては、そのトラブルが表面化することも少なくありません。
Biz Markie(ビス・マーキー)事件
Biz Markie
サンプリングによる著作権問題が表面化し裁判沙汰に発展した有名な話です。
ニューヨーク出身のコミカルラッパーBiz Markie(ビズ・マーキー)が1991年に自身のアルバム「I Need A Haircut」に収録されている「Alone Again」という曲で、アイルランド出身の歌手Gilbert O’Sullivan(ギルバート・オサリバン)の1972年にリリースされた「Alone Again(Naturally)」という曲をサンプリングしています。(お気づきだと思いますがタイトルから丸パクリです。笑)
ギルバートの「Alone Again(Naturally)」は当時ビルボードHOT100で1位も獲得しており、ギルバートがトップ・シンガーの仲間入りをしたきっかけともなる曲でした。
まさに「Alone Again(Naturally)」をサンプリングして作られた曲ですね。これをビズ・マーキーはギルバートの使用許可を取らずにリリースします。(このアルバムは “ドリーミーかつスウィート” な仕上がりが評価され当時のヒップホップシーンとしてはかなりヒットしました。)
これを聴いたGrand Upright Music(Alone Again(Naturally)の著作権を保有しているレーベル)はビズ・マーキーと所属レーベルに対し著作権侵害を主張し訴訟を提起します。結果ビズ・マーキー側が敗訴し、アルバムの回収を命じられてしまいました。
Coolio(クーリオ)とStevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)
Coolio
出典:songkick.com
1995年、アメリカのコンプトン出身のCoolio(クーリオ)という当時無名だったラッパーが「Gangsta’s Paradise」という曲で大ヒットを飛ばしました。
この曲のサンプリング元はあの超有名ミュージシャン、Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)の「Pastime Paradise」のサンプリングによって作られた曲です。
当時このサンプリングの事実を知ったスティーヴィーはクーリオに対し「売り上げの90%を支払ってくれたら使用許可するよ」と言いサンプリングでの曲の使用を許可したそうです。
サンプリングは既存のヒット曲の引用によって自分を大きくプロモーションする場にもなり得るわけですが、そこには著作権の問題と、使用許可を得たとしても原曲の権利を持っている人が儲かるという構図になってしまい、サンプリングの手法で製作された曲は上述したようなトラブル沙汰をきっかけに「パクリの音楽」や「やっても儲からない」というイメージダウンが起こってしまいました。
サンプリングによる著作権問題を回避するためにキーボードなどで元ネタを弾き直して抜粋するという方法も現在は一般化しておりますが、それではやはり原曲の持つ当時の空気感みたいなものが再現できませんので、原曲のサンプリングにこだわるアーティストも現在もたくさんいます。先述したようにサンプリングといっても最近は1、2小節を抜粋したくらいでは権利者も見逃してくれるのが正直なところだと思います。
ビズ・マーキーの件に関しては、フックでAlone Again(Naturally)のサビの3語までしっかり使ってしまったので、まるっこカバーみたいになってしまいそこが訴訟の原因となったのではないでしょうか。
でも誰がなんとっても、サンプリングはやはり魅力のある手法であり、今やヒップホップの枠を越え様々な音楽ジャンルに取り入れられているのも事実。おそらく未来永劫無くなることはないでしょう。
DJ Premiereのように超絶絶妙なチョップアンドフリップでどこをサンプリングしたのかわからないような複雑な技法をやれるプロデューサーがたくさん出来ればサンプリングのレベルももっと上がるでしょうね。
というわけでヒップホップにおけるサンプリングの説明でした。
では、今回はこのへんで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。