nekuradjです。
前回、前々回と
ヒップホップDJの元祖:クール・ハーク
ヒップホップの名付け親:アフリカ・バンバータ
という、ヒップホップの歴史を語る上で
必要不可欠な超重要人物をご紹介しましたが
実はもう1人、ヒップホップを語る上で
必ず出てくる重要人物がいます。
それがグランドマスター・フラッシュという人物です。
グランドマスター・フラッシュは
DJのスキルをものすごく研究し尽くし
よりレベルアップしたDJの完成版を
作り上げた人物と言えるでしょう。
そんなグランドマスター・フラッシュの功績を
まとめていきたいと思います。
グランドマスター・フラッシュとは?
グランドマスター・フラッシュ(Grandmaster Flash)
本名:ジョゼフ・サドラー(Joseph Saddler)
彼はバルバトス島という島国出身で
クール・ハークと同じく移民によって
ブロンクスにやってきた人物です。
ブロックパーティが盛り上がっていた1970年代前半
彼は周囲と同じようにストリートカルチャーを吸収しながら
成長していく青年でありましたが、少しだけ周囲と変わった
感覚を持ち合わせていました。
それは機械への興味です。
父親譲りな部分もあったそうで
家にあるラジオなどの機械を勝手に解体しては
仕組みを調べることが大好きな少年だったそうです。
そんな彼はブロックパーティに行っても周囲がDJプレイで盛り上がっている中
終始DJの使う機械が一体どんな仕組みで動いているのかを
釘付けになって見ているという変わった楽しみ方をしている青年でした。
どうやってあんな音が出せているのか。
その機材にはどんな法則があるのか。
常にそんなことを考えては自宅で研究していたそうです。
まさに機材オタクです。
ただ、この青年の好奇心がなければ
現代の機材の発展はなかったと言えるでしょう。
そんな彼は後々、DJが苦労していた問題を
次々に解決していき、周囲からDJプレイの素早さを評価され
「フラッシュ」というあだ名で呼ばれるようになります。
名前の由来は、アメリカ漫画「DCコミックス」の
「フラッシュ」という超スピードで疾走するキャラクターから
ついた名前だそうです。
機材の研究と日本技術との奇跡的な出会い
彼はクール・ハークの得意としていた
「ブレイクビーツ」の技法を見ていて
いくつかの問題点があることに気が付いたそうです。
「ブレイクビーツ」については
クール・ハークについて紹介した記事で書いておりますので
こちらも合わせてご覧ください。
彼が見つけた問題点というのは
- バックスピンの問題
- スタート時の速度の問題
- 片方の音を出してる間、もう片方の音が確認できない問題
というものでした。
要はもっと早く曲を展開させられないか。という点です。
そして彼はこの問題を解決すべく
また自宅に引きこもり、研究を続けます。
1つ目のバックスピン問題については
大きな紙を円状に切り取ってレコードの下に挟めることで
解消できたといいます。これが後にDJには欠かせない
スリップマットの原型と言われております。
(素晴らしい…)
2つ目の問題であった、スタート時の速度問題ですが
これに関しては彼自身ではどうにも出来なかったと語っています。
確かにアナログのターンテーブルでスタートした瞬間
いきなり一定の速度で回り始めるターンテーブルなんて想像できません。
しかしそんな中、彼の想像に一番近い動きをしていた
ターンテーブルのメーカーがあったそうです。
今まで使ったなかで一番速く最大速度に達して感動をした。驚いたことにこれが全く聞いたことがないメーカーが出してるターンテーブルだったんだ。それには小さくステッカーで「Technics」と書いてあったんだよ。
引用元:playatuner
なんと、彼の想像に一番近い動きをしたのは
日本(パナソニック)製のターンテーブルだったそうです。
そして3つめの問題に関しては
電気系統に詳しかった彼はミキサーを改造して
流れていない方のターンテーブルの曲を
DJプレイ中の自分だけが聞こえるシステムを
開発する事に成功しました。
これが後のDJミキサーには当たり前に備わっている
CUE(キュー)機能です。
フラッシュによって生み出された技
こうして問題を次々に解決していった彼は
1970年代後半にDJキャリアをスタートさせます。
彼はクール・ハークの
ブレイクビーツの技法を参考にしつつも
さらにその技術を進化させていきます。
フレーズパンチング
これは曲を流している間に
もう片方のターンテーブルで楽器の音や
アカペラのフレーズの一部を混ぜるという技です。
ラブ
ラブ(Rub)とは“擦る”という意味で
スクラッチの前進のようなもので
曲が流れている間に、もう片方のターンテブルで
別の曲を「ジュク!」とレコードを前後に擦った音を
わざと混ぜる技法です。
元々は曲を繋ぐために音を確認していた動作が
間違えてボリュームを上げてしまったために
「ジュク!」と音が混ざってしまったものでしたが
これが意外とカッコイイなと判断したジョゼフは
あえてこれをDJプレイに取り入れました。
スクラッチ
中でも彼が広めた有名な技がスクラッチです。
実際にスクラッチを発明したのはジョゼフの友達ジーンの弟の
セオドアという人物でした。
ジョゼフがジーンの家でDJの練習をしている最中に
セオドアがジョゼフのラブの技法を見て
こんなのはどうかな?的なノリで
「ジュクジュクジュクジュク…」と繰り返し
レコードを前後する動きでリズムを作ってみると
こりゃあ良い!となって、すぐさま自分のDJプレイに
取り入れることにしました。
そして彼らはスクラッチを入れたミックスを取り入れ
レコードを逆回転させたり、肘でスクラッチして見せたりと
人目を引くパフォーマンス力で観客を楽しませました。
ブロンクス以外でのパフォーマンスとヒットシングル
グランドマスター・フラッシュの功績を
さらに挙げるとすれば
グランドマスター・フラッシュ&ザ・フューリアス・ファイヴ
というグループを結成し、ブロンクスに止まらず
ニューヨークから飛び出し、アメリカ各地の黒人層に
その人気を証明する活動を行ったことでしょう。
1982年
シュガーヒル・レコードからリリースした
「ザ・メッセージ(The Message)」という
当時の大ヒット曲があります。
ヒップホップファンであればおそらく
一度は耳にしたことのある曲でしょう。
この曲はゲットー(治安の悪い地域)に住む
若者を描写した曲で、ニューヨーク周辺だけで
50万枚ものセールスを記録したそうです。
ということでグランドマスター・フラッシュは
クール・ハークからDJの技術をしっかり受け継ぎ
さらにその技術を底上げし、ヒップホップを
世界の音楽ジャンルの1つとして根付かせた先駆者的存在。
というザックリしたお話でした。
どの音楽ジャンルにも起源はありますが
こういった歴史を知ると、その音楽をより好きになれたりしますよね。
こういう記事を書いていると改めて
ヒップホップって面白い文化だなと思わされます。
自分はまだブログを始めて浅いのでライティング力に乏しいですが
今後もっといろんな人に影響を与えられるような
ヒップホップの面白い記事が書けるよう努力していきたいと思います。
ということで、今回はこの辺で。
最後まで読んでいただきありがとうございました。